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GRAILは解散した。
その事をメンバー全員が知ったのはウォーリックがナベリウスでの戦いを終えた後だった。
ウォーリックは生きて戻るつもりだが、万が一がある。
解散しメンバーに自由を与えておけば再建も可能だ。
その心構え、真たる想いはおそらくブラウリヒトは状況を理解するだろう。
八代も然り。シェスファは……おそらくてはかかかるがブラウリヒトが何らか対処をする。
やるだけの事はいまやり終え、今はラピスと任務に集中する。
打開策はまだ見えない。
「ウォーリックさんはどうお考えです? この状況……」
ラピスが戦闘で乱れた髪を軽く整えつつ訊ねた。
「私の考え、というか推測をきいて頂けますか」
無言でウォーリックが頷く。
涼やかな声音だがその内容は物騒そのもの。
「DF【巨躯】がナベリウスから飛来した際に発生した極大的エネルギー……仮に負の力と呼びましょう。その負の力により今までのダーカーが変質した。【巨躯】の影響だけでナベリウスの原生種が変わった様に、負の力の影響はダーカーすら変えたのでは無いでしょうか…… 」
ウォーリックが見えてもラピスの分析は冷静且つ的確なものだった。
そして眼を伏せつつ頷く。
「合点の行く解釈だ……」


2-8.png


既にラピスに拳を癒してもらったとはいえこのまま、二人で何処まで行けるものか。
分からぬ恐れに立ち向かう。
正直、ウォーリックの胸には自分たちは捨て駒である可能性をぬぐい去りきれない。
先ほどの暗号電文の後、返信が無い。
長老会の検討があったとしても今回の依頼方法、状況、いずれも即断即決を要する筈。
大樹そのものが腐ったか……とウォーリックは思う。
ルーサーという内部に在った強大な脅威が消え、敵対しない関係である六芒均衡は力の意味以外での脅威がない。
聖なる大樹とフォトンの教義。それ故にダーカー根絶を掲げる教団。
世界樹であり、セフィロトとして機能するそれは人と聖なる魂との合議で在ると言う。
ある意味ではフォトナーと変わらないとウォーリックは皮肉な笑みを浮かべる事がある。
まさに今はそういう瞬間だった。
だが戦う、それがウォーリックにとっての教義も同じ事。
闇を憎み、絶つ。
教団が動かぬなら僕がやる。
揺るがぬ意思が更に不動のものとなりギラリと光らせた。
そして伴う青いワルキューレはその気配を感じながらも微笑みを絶やす事は無かった。


「スバルちゃん、お話があります。」
「母上、何でしょう?」
自分と瓜二つの母に呼ばれ、スバルは粛々として道場で正座をした。
母・夢幻は過去に過剰なフォトン適合の影響と彼女自身の体質をもってスバルと瓜二つ。スバルを10代で産んだ姿のまま固着し一見すれば姉妹の様に見える。
一方スバルは先日、ヤシャを手に入れ現当主として周囲に力の証を見せ、新しい愛刀に馴染むべく稽古に励んでいた最中の事だった。
長時間の稽古で一筋流れる汗があれども、人形の様に可憐。
だが本人にその自覚は無い。
むしろ外見がどうであるとかそう言った事は気にかけず、母の趣味で服を渡されているスバルはその点において人形とは似ている部分があるのかも知れなかった。
「単刀直入に聞くけれど、想い人はいないの?」
母の突然の言葉に意表を突かれスバルはポカンとせざるを得なかった。
「え、いや……母上?」
「スバルちゃん。あなたはもう当主なのよ。黄河の血筋は本家に男子が産まれない家系。知ってるわね」
「はい」
「その剣技、あなたの伴侶になる人も学ばなければ技は磨かれてゆかないの」
スバルは早くに父を亡くした為、記憶には無いがそれこそ立派な剣術家であったと聞いている。
それ故に、母は愛情と厳格さをもってスバルを育てて来た。
「その時間を考えたら、スバルちゃんはもうそろそろお相手を考えてくれないと……」
まだ17歳のスバルに急な話だが、母にしてみればそれも随分我慢をして来たのかも知れない。
そう思うと何かを言い返す事も出来ない。
「母上、その件は今しばらくお待ち下さい。私も検討します……」
どうしよう……本音はそうしたものであった。
優しい母だが、厳格な面は本当に厳しく、家とスバル本人双方の事となればもうそれこそ厳しさは一層増すものだろう。
……ハルさんに相談しに行こう……気安くかつ口の堅い年上の女友達を思い浮かべ、スバルはハルのルームへ行く支度を始めた。


シオは焦燥に駆られていた。
今までこんな事は無かった。だが頼れるものはただ一つだけ。
赤銅の肌をしたデューマンの彼女が少し青ざめた様に息を切らしてルームに入った。
「ウォーリックはいるか!?」
その勢いに暖かいココアを飲んでいたシェスファは一瞬反応を返せなかった。
「兄様は帰ってないよ、シオさん。任務なのかどうなのかな……」
訥々と返すシェスファは昨日ウォーリックが帰宅しなかった事、チームが解散した事を気にしていた所、ブラウリヒトから心配するなと言われて落ち着こうとつとめていたのだった。
「アテが外れたか、畜生!」
シオの様子は尋常ではない。首を大きく振り、ぎらつく眼が更に血走っている。


2-9.png


血気盛んな性格とは言えシオはハルのチームメイトであり、右腕であり姉妹のような存在だ。
それがここまで取り乱すとは何事かとシェスファも内心首を傾げた。
「……どうしたのシオさん」
恐る恐る問うたその答えはありえない話だった。
「ハルが、消えた……」
「え!?」
この言葉にはシェスファも表情を失う。
「いつもみたいに気まぐれで何処か行ってるんじゃ……」
「違う! それならオレには分かる! 完全にハルが消えてるんだ。もしかしたらウォーリックならと思ったのに。ああっ!」
右手を側頭部にあて、失望の色を隠せないシオにシェスファは怯んだが、彼女なりの思い切った提案をした。
「捜しに行こうよ! シオさんは普段自身があるんでしょ? それにあたしもついてく! 思うより行動だって! ハルさんもいつも言ってたもん! 」
能天気というか、自体の深刻さを理解してないのかと一瞬怒鳴り声になりそうになったが、シェスファのあまりの笑顔に完全にシオは怒気を抜かれた。
「そうだな、うん。動かなきゃ何も始まらないからここに来たんだもんな。力、貸してくれ、シェス」


2-10.png


「うん! 頑張る! 」
果たして乗ったのは大船か泥舟か、拳を上げる様は頼りがいがあるのか無いのか皆目検討はつかなかったが、シオの心に僅かでも余裕を生み出した事に違いは無かった。
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マボロシノナキガラ【1話】

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ハル

祝二話目!
シップの方も何やら慌しくなってきた模様…これからの展開が気になりますね!
そしてウォーリックさんから見た各キャラ達はこんなイメージなのかなと思いながら読むのがとても楽しいです(*´ω`*)

2015年02月26日 22:07

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ウォーリック

Re: タイトルなし

> ハルさん
何とか今月中に二話目行って良かったw
皆さんから頂いている設定を活かしつつキャラ立てをどうするかと色々頭を働かせて頑張ってます。

2015年02月26日 22:45

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赤雪

執筆おつかれさまです!
スバルさんの設定が面白いw
まさかの恋愛要素も入ってきちゃうし、かと思ったらハルさんピンチっぽいし……先の読めない展開にハラハラしちゃうね!
次回も楽しみにしてます!!

2015年02月27日 10:28

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ウォーリック

Re: タイトルなし

> 赤雪さん
今回はいかに前回と空気を変えるかもテーマなので、骨格は決まってますが肉付けをこれから出てくるキャラクターの皆様含めどうなるか……楽しんで貰えましたら幸いですね〜

2015年02月27日 10:53

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スバル

執筆お疲れ様です。
前回に散りばめられたガロオマージュに、ニヤリとしました!
我が家をカッコよく書いて頂き、感謝感激です。この先、どうなんだ!?と母上とワクワクしながら読んでます~。赤雪さんも、黄河家の設定を楽しんで頂けて、ありがとうございます!

2015年02月27日 22:07

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ウォーリック

Re: タイトルなし

> スバルさん
聖騎士団のイメージが僕の中では番犬所なんですよね。
匂いを感じてくれたならまずはよしかな。

黄河家はチャットで言ってたイメージそのままと普段のお二人にばるさん側が、少し設定に併せて演出した感じですね。
丁度ヤシャも手に入れたとの事で、早速要素を加えてみました。
ばるさんもこれから活躍してきますのでご期待あれ。

2015年02月28日 02:45

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