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アークスシップの中で名無しのフォトナーが一人、また一人と消えて行く。
だがそれを知り得るものは僅かにしかいない。
存在そのものを隠蔽されたもの達だ。
それが失われようが気に留めるものも僅かだ。
彼らの集めようとした絶望は、果たして何処へ向かうのか。

暗がりの部屋。ある身分の僅かなものたちが集う場所。
カテドラルスーツの男達が言葉を交わし始めた。
「既に事は始まっているようだ。」
重々しい口調が、苦い響きを持った。
「アークスのダーカー化……か」
「既に幾人斬ったか……元は仲間、気分の良いものではない。」
「だが状況は収束しつつある。元凶らしきもの達が次々に消されているようだ。」
「例の件はどうなった?」
「リリーパへの厳戒態勢も解かれた。ジャミミングも薄れつつ有る。連絡ももうじき取れるだろう。」
一同は頷き、また散開して行った。

赤雪たちのシップへ集合した一同は身支度を整え直し、現在に至るまでの状況の照らし合わせと、八代の様態を見定めていた。
現段階では簡単には回復する様子は無いものの一命は取り留めている。
僅かでも遅れたならば絶命する可能性があった程の重傷である為、アトマイザーでの即時的回復は見込めない。一旦は生命維持装置で維持と回復をさせる。現時点での最善策はそれだった。
「マァナさん……」
赤雪の視線に込められた想いをマァナは察して微笑んだ。
「大丈夫、八代さんなら絶対元気になるわ。だってエルダーだろうと一人で倒せるって、いつもそんな調子なんだから。」
命の灯火さえ消えなければ八代は必ず今まで通りになり戻って来る。
マァナの確信と思いはより強く彼女の心を支え背筋を伸ばさせた。

「奴らの狙いは一体なんだ。」
腕を組んだブラウリヒトがマァナを睨む様に見る。
一同の中で、唯一内部事情を知るのは彼女だけだ。
未だに疑念をもたれるのは仕方が無いだろう。
「多くのアークスの深い絶望……気にかかかるのはその言葉。」
「そしてアークスをダーカー化させるその研究……か。」
壁にもたれていたウォーリックが皆に語りかけた。

2014-08-06-100458.jpg

「最悪の事態として聞いて欲しい。」
目を伏せていたが、思案していたものが形を結び、答えを告げるようだった。
「恐らく僕はダーカーになる。」
極めて冷静に、感情を込めず。その言葉の意味を自分へ落とし込んだ。
「兄様!」
それ以上を聞きたく無いとばかりに叫ぶシェスの肩へハルの手が差し伸べられ、ゆっくりと優しく包む。
ハルの視線は口を結んだウォーリックの眼差しと交差した。
どんな事態も言葉も、受け止める強さが互いそのへはある。
赤雪が感じた違和感は少しずつ大きくなり、この場でその違和感の正体が掴めた。
今はただ彼の決心と決断を聞かねばならない。
「マァナさんの話を統合した結果と、あの八代さんの侵蝕クローン体。そして今の僕自身の急速的な回復……いずれも僕に当てはまる。欲する絶望の数と言う目的は分からないが……一つの可能性だが、関わるものがヤツならば……」
一同を見た後に更に続けた。
「ハルさん、赤雪さん。特に二人ならわかるはずだ。僕の中にある闇の種子が。」
フォトンを侵蝕して行く闇の力。今は潜めてはいるが確実に蝕む害虫の様に彼の中へ存在している。
感覚に優れた二人は言葉にする事も出来ず、無言で認めるしかなかった。
乾いた布へ一滴一滴と染み入るその濡れた影。
その事実に当人がここまで平然としようと努める限り自分達が動揺する訳にはいかない。
ウォーリックはまぶたを伏せ静かに言う。
「ビギナーさん……頼みが有る。僕の生体サンプルを提出し、分析をして欲しい。結果によっては……」
ウォーリックの言葉を、少しだけ咎める様に。そして少し諭す様にビギナーが遮った。
「そういう覚悟は口にしないものよ。頼まれついでに報告も全部済ませましょ。」
自らののサンプルを提出する。
それはかの集団に抹殺される覚悟も示すものだった。その意味をビギナーは承知している。
だからこそ、ここに居る思い入れを持つ面々にその事を悟らせてはいけない。
「シップの一台はサンプル運搬兼ねて先に行くから、八代さんも運びましょ。」

一隻のシップを先行するビギナーへ八代の運搬も任せ、ラグズへ向かわせた。
残った面々はこれからの対策を立てる為思案する。
進行具合がどの程度のものか、それすら読めない。
「兄様……」

2014-08-07-183620.jpg

シェスの面持ちは涙を堪えるのに必死だが、悲痛な心を隠せないものだった。
幼い頃、両親を亡くし孤独になったシェスファを優しく迎え、どんな時も守り、時には叱咤してもくれた。我がままを言おうが、苦笑いをしていつも甘えさせてくれた大切な従兄。
失いたく無い想いがこんなにも強いものだったとシェスファは知ってしまった。
どうして良いのか分からずウォーリックを見る事すら叶わない。
「これは想定だが、ターゲットは僕に絞られた。先行したビギナーさんはまず狙われないはずだ。」
自嘲する様にも見える口の端は後悔も見えた。
「戻れるなら皆に戻ってもらうべきだったな。」
パシッ、と乾いた音が響く。
ウォーリックに近付いたハルが、頬を叩き見据えていた。
驚く一同を気にも留めず、強い語気でハルが続けた。
「それこそ言っちゃいけない事だってウォーリックさんは分かってる筈だよ。最後までハルさんは一緒に戦うよ。みんなの顔を見て!」
真っすぐなハルの信頼。静かな面持ちのブラウリヒト。穏やかな目で見つめるマァナ。こんな時だからこそ真剣な眼差しで微笑む赤雪。不動のダグラス。軽く方をすくめつつも肝を据えた表情のさどじま。
ただ一人、シェスファだけが目を背け俯いている。
「どうやら、思っていた以上に弱気になっていたか。」
大きなため息をついて、ウォーリックは手を前に突き出した。

2014-08-06-100439.jpg

自嘲や弱気の色はもう瞳に欠片も無い。
「頼む、僕と一緒に戦ってくれ。」
そしていっそう固い意志を感じさせる声で言った。
「これだけは約束する。どんな結果になろうと希望だけは捨てない。」
拳の上へ真っ先にニッコリと笑ったハルが手を置いた。
「ウォーリックさんがやりたいようにすればいい。ハルさんは勝手にするだけよ。」
無言で手を重ねるのはブラウリヒトとダグラス。
意思を固めた男には言葉は要らないとばかりに視線だけが向けられた。
「力になれるなら、私も…ね。」
マァナがそっと掌を重ねる。
「自分も、ここまで来たら一蓮托生です!」
さどじまも陽気な声で加わる。
「遠慮なんか要らないよ!」
いっそう明るい声を赤雪があげる。
「シェスちゃん!」
軽く手を引く様伸ばす赤雪の手にシェスファの指先が触れる。
「兄様を一番信じなきゃいけないのはだぁれだ?」
ハルが赤雪の行為に乗りかかるように悪戯な微笑みでシェスファを見る。
姉のような眼差しはシェスを信じる温もりに満ちている。
「もう足手まといじゃない、証明するチャンスだぞ。」
ブラウリヒトの言葉は二人を見続けていた年期ある父親のような優しさがあった。
悲しそうな表情を抑える事は出来ないが、シェスファは心にある勇気を全て振り絞り一歩足を進め、皆と手を合わせた。
「ありがとう。」
ウォーリックの言葉の直後、リリーパの空が赤黒く染まった。
アークスの優れた視力なら視認出来るその巨大な姿……それは旧マザーシップ。
かのDFの居城が悪意とその欲望を吐き出すかの様に重圧を浴びせながら現れたのだった。

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偽りの道化師【16】

補足と追記【6】

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赤雪

執筆おつかれさまです!

クライマックスに向かう、それぞれの立ち居地や覚悟がつたわってくる!
シェスファの活躍に期待しちゃうね……
ブラウリヒトさんのお父さんっぷりも素敵!

2014年08月08日 20:47

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マァナ

新作きたー!シェスファの表情がすごく切ないかんじに撮れててホント挿絵みたくなってるー!
みんなの決意が伝わってきて、これからの戦いどうなるかわくわくしちゃうっ

2014年08月09日 00:07

comment avater

ウォーリック

Re: タイトルなし

> 赤雪さん
赤雪さんの父性への関心が僅かでも反応したら何より。
お仕事忙しい様子、心配ですが応援しております!

2014年08月09日 01:10

comment avater

ウォーリック

Re: タイトルなし

> マァナさん。
ありがとー!
あの表情はある意味よくぞ撮れてくれた、と言う一枚です。
8-10枚位カット取り続けて実は2枚目にとれたあれが一番良かった。候補も1枚目か2枚目かだったので。
さぁ、後はまた未登場の数名、果たしていつ現れるのか?

2014年08月09日 01:14

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