上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

ナベリウスから帰還した赤雪は、ゲートをくぐった瞬間険しい表情となった。
「マァナさん!?」
「はぁい、赤雪さん。」
赤雪の表情と違い、マァナは笑顔で返す。
だがアークスシップ内でのPAやテクニックの仕様は禁じられている。
危害を加える事は出来ぬはずだが、その真意が見えない以上警戒は解けない。
「何をしに来た、もしも規定に反してでもリーダーに害をなすというならば。」
「塾長が言うまでもないわ、ここにいる全員同じ。違反だろうと相手になるよ。」
ダグラスとさどじまの二人が赤雪を守る様に割り込む。
ナベリウスの件もあり、一同はマァナへの警戒を緩めず、信用する気配もなかった。
「待って。みんな……二人にしてもらえないかな。」

2014-06-29-154115.jpg

意外な赤雪の言葉に、一同が驚きを隠せない。眼前のマァナ自身すらもだ。
メンバー一同はその命令に従い、二人だけが残された。不思議そうな顔をするマァナへ赤雪は真剣な眼差しを向けた。
「だって、マァナさんの力になりたい。あたしは欲張りだよ。行方不明のウォリさんも、マァナさんの大切な人も。絶対に諦めたりしないから。」
言葉を切った赤雪をマァナも見つめ返す。
赤雪が人払いをした理由。それは一つ。
自分はマァナを信じるという意思。
マァナが胸の中で呟く。本当に感じたままの子だ。だから自分も心を決めた。
あの人は怒るかも知れないけど、本当に馬鹿かも知れないけれど……。
「図々しいのは分かってる。今度は何一つ嘘はない。赤雪さん、私に力を貸して。」
「マァナさん、あたしはその願いに叶うだけの力が無いかもしれない。でもその力が助けになるなら…」
「その言葉だけでも嬉しい。私はこんなに酷くて醜いのに……本当にあなたは優しいんだね。」

2014-06-29-154611.jpg

穏やかに微笑んだ後、マァナが語ったのは、虚空帰還の残党はルーサーの事件当時に調査で各惑星へ派遣されていたもの達によって再編されているという事実。
狂信的な崇拝者がルーサーにが破棄したデータを自分たちが使える技術として転用し、幾人かのアークスで実験していると言うのだ。
そしてマァナのクローンも少なからず生成されてるであろう可能性が語られた。
「まるでアブダクションの後。でもアークスのデータを単なる情報としてでは無く、生体サンプルもしっかり植えつけた上でのクローン。自我も強くてたちが悪いかも。」
「混戦になったらどうしよう、それじゃ、本物のマァナさんと見分けが」
「大丈夫。それは私にまかせて。タイミングはまた連絡するわ。」
そう言うと、マァナはもう一度微笑み踵を返した。



「報告……とは何かな?」
フォトナーを自称する痩せた男が眼鏡を上げる癖を交えながらマァナを見た。
「赤雪さんとまた接触したわ。」
「何だと!?」
想定に無かった行動に驚く男はスケールの矮小さを露呈させるのを恐れ、軽く咳払いをした。
「もう一度信用させる事に成功したの。だからチャンスを貰えないかしら?」
「ほう……それは朗報だ。まぁ、あまり焦りすぎるのも良くはないだろう……決行は明後日にでもしよう。うん、赤雪ほどのアークスなら失われた時、絶望は充分に集まるだろう……」
男は陶酔しきった目で宙を見た。
「絶望?」
「……ン……これは口が過ぎた。仕方有るまい。我らの待望する世界を作るには多くのアークス達の深い絶望が一度必要なのだよ。過去を変えたくなる程の……ね。」
「それには私も数に入ってるのかしら……絶望する側に。」
眉をひそめながら低く尋ねる。
だが男は気分が悪くなるほど意地の悪い笑顔を浮かべた。
最後のフォトナーを名乗った男の持つ高圧的な部分のみをカリカチュアした、そうとしか言えない低次元な笑みだ。
どれほど尊大にしようともあの男と比べたら……猿真似に過ぎない。少しばかりの力を手に入れ図に乗っているに過ぎないようにしかマァナには見えなかった。
「ん? それは結果次第では無いかね? 成功すれば八代くんの命は保証しよう。失敗すれば君が絶望してくれればいい。我々にとってはどう転んでも良いが、君の為に成功を祈るよ……」
「つくづく嫌な人ね。いいわ、ただし……」
マァナは軽く顎を上げ男の態度に対し意思を突きつけた。
「何だね?」
「万が一の保険よ。命はと言ったけど、成功して彼に会えるかは保証して無いでしょ。今度はせめて彼の居る星に……リリーパに行かせて。」
瞳の周囲をライトが反射し彩った。それは炎が揺らめき燃える様だ。
「いいだろう。それくらいは叶えてあげよう……そして負けない準備はさせてやろう。時間が無く強化は出来んが……」
高揚しているのか血色の悪い顔にやや血の気がさしていた。
「朗報を、ね。」
髪をかき上げながらマァナは背を向ける。アクセサリーの翼がその心に応えるよう揺れた。


「惑星リリーパへ行方不明者の調査任務……対象は八代吉人。なしごれんを指名で同行者にマァナを加えるように……か。」
ナベリウス帰還から一日を挟み下された指令書の内容を確認すると、ダグラスは腕を組み赤雪へ向き直る。
アークスの中核に何者かが関与している、もしくは偽物であろうと情報を操作出来るものが居る。
あるいは双方かも知れない。油断出来ぬ状況であるのは違いない。
「どうする? 」
「え、行くよ。あたしと、塾長と、じまさん。」
さぞ当たり前のように言う赤雪の調子は普段通りの明るいものだ。
拍子抜けしたダグラスが思わず息を吹き出してしまう程だった。
「リーダーがそう言うなら俺は構わんが……」
「塾長、大丈夫だよ。」
言葉を遮る赤雪の深く落ち着いた声。
聞き慣れぬその音にダグラスが目を大きく開き、少し間を置いて笑った。
その成長と決断を信じる。その想いを込めて言葉にした。
「そうか、なら大丈夫だな。」


リリーパの熱砂をものともしない。
フォトンのコントロールに長けたアークスとはそういうものだが、気分と言うものはある。
「暑ぅ……って言いたくもなりますよねぇ。」
冗談めかしてさどじまが言った。
「鍛え足りんからだ。」
肉体そのものが説得力の塊である男に言われては、殊勝な態度にならざるを得ない。
「スミマセン。自分ももっと精進します。」
赤雪がその様子を見ながら笑う。
対照的に横に立つマァナの姿はどことなくぎこちない。
「じゃ、塾長とじまさんが組んで、あたしとマァナさんが組んでそれぞれ捜そっか。」
指示に従いそれぞれがツーマンセルとなり、採掘場跡を捜索にあたる。
赤雪とマァナ二人が捜索するのは砂漠部分よりも、採掘場の施設周辺を主にする事にした。危機があった場合隠れるべき場所としては最適だからだ。
話しかける赤雪に対して、マァナは機械的に受け答えをする。任務のそのものが大切な人物の救出ともあればこうなるだろうと思える静けさだ。
やがてその一方的なコミュニケーションが断ち切られる時が訪れた。
「ここかしら……」
「え?」
ふと立ち止まったマァナが冷たい目で赤雪を見る。
「あの人を救うため。やっぱり方法は一つ。」
左手を高々とマァナが上げると施設の高台から現れる四人のマァナの姿。
「クローン!」

2014-06-29-161058.png

赤雪が叫ぶと同時に総勢五人のマァナ達が赤雪目がけ襲いかかる。
「追いかけっこは……嫌いじゃないわ。」
「狩人は五人、獲物は一人…」
「お願い、あの人の為に」
同じ声が交差する。痛みだけが込められたそれは冷酷さとはまた違う恐怖と、狂気をはらんでいた。
先制する二人に自在槍を構え応戦する体勢を崩さず、宙を向け放った自在槍で使い飛び交いながら銃弾を交わす。舞うエレクティフィニスの羽根は、赤雪がブランコの様に揺れる赤雪の肌に傷を付ける事は無い。
だが多勢のマァナ相手にいかにして戦うのか、いずれ疲労し以前の対決の際よりも悪い結果を迎えるのは容易く想像がつく。

pso20140629_161349_128.jpg

だが赤雪はその動きを止めず、五人のマァナを導くように進む。
瓦礫を背にした赤雪は呟く。
「この辺りでいいかな。」
着地から反撃に転じ、放たれた弾を弾く自在槍・ファティウーマ。



赤雪はそれを合図のようにふと笑みを浮かべ、テレパイプを投げた。
光の円柱から現れたのはハフリマイヒメに身を包み目を伏せたマァナだった。
あえてクローンを赤雪に同行させる事で自らは遊撃をする。
そうマァナは提案したのだ、双方に。
どちらに対しても嘘ではない。だが彼女が選択する答えは一つ。

2014-06-29-164711.jpg

「はぁい、私たち。」
軽い跳躍から赤雪と背中合わせになり、すらりと抜くは紅葉姫。
「じゃぁ、あたしも本気モード!」
赤雪はファティウーマから巨大な手裏剣型の嵐魔へ持ち替える。
二人の抜刀に合わせ舞い散る紅葉。
たじろぐマァナ達へ向け、けん制に円盤状の衝撃波を放つ。
不意をつかれる事になった一人を赤雪の嵐魔が捕縛し電撃を見舞う。
重ねて再びマァナが飛ばすソニックアロウの衝撃波が地表に積もった砂塵を吹き飛ばし直撃する。
砂漠地帯に咲く紅葉が地に落ちるまでの一瞬で、一人のガンナー・マァナが倒れた。
「時間がないから侵蝕無しのクローンで来ると思ったわ……サンプルはガンナーの私……」
漂う気迫が、クローンマァナ達を寄せ付けない。
長い刀身を軽く返し構えを整える。

pso20140629_164628_364.jpg

「偽者さん、本当の私を見せてあげる!」
赤雪が初めて聞く荒々しいマァナの声。
怒りと決意。
そう、彼を生きて助け出す。正面から堂々と。
馬鹿な事……そう彼に笑われるなら自分らしく、汚れた糸は断ち切り自分の意志で道を切り開く。
この意思こそマァナがマァナである証明。
人質に怯え、操り人形になる自分など切り裂いてみせる。
きっと少し困った顔で、いつものように微笑んでくれる。
マァナの心に八代の顔が形を結んだ瞬間、想いを乗せ振り切った紅葉姫の切っ先が再び開戦を告げた。
スポンサーサイト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

偽りの道化師【13】

補足と追記【5】

comment iconコメント

comment avater

赤雪

新作きてる!執筆おつかれさまです!

こんな展開になるとは予想外だった!!
切れ者なマァナさんカッコいい!!

嵐魔で戦闘シーン撮り直したいw

2014年07月03日 16:35

comment avater

ウォーリック

Re: タイトルなし

> 赤雪さん
マァナさんがいかに立ち回るかで悩みましたねぇ……自分も想定しなかった冴えたマァナさんになりました。
クローンSSが思ったより自然に加工できたのも何とかw
まだ戦闘開始の合図みたいなもんだから、嵐魔の戦闘SS撮影しよう!

2014年07月03日 17:47

comment avater

マァナ

新作待ってましたあああ!
読み終わったら満足してコメント欄開いたまま寝ちゃったのは秘密です(ぇ

SSとマッチしてて小説がさらにいいカンジに表現されてるカッコイイ!
切れ者な私とか小説でしか見られないよきっと(笑)

2014年07月03日 18:27

comment avater

ウォーリック

Re: タイトルなし

> マァナさん
ゲートのシーン書いた後に某波乱があり、執筆停止してましたが、何とか。
赤雪さんから貰った二人のSSを見たら、こんな風になりました。
マァナさんも体調気を付けてねー!

2014年07月03日 20:27

comment avater

赤雪

またブログで本編引用させてもらいました!
不味かったら修正します!

2014年07月04日 21:19

comment avater

ウォーリック

Re: タイトルなし

> 赤雪さん
了解でーす。
問題無しですよん。

2014年07月05日 07:30

コメントの投稿



trackback iconトラックバック

トラックバックURL:

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。