上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

八代は浅い眠りの中、たゆたう記憶から一つの夢を紡いでいた。
ウォパルが発見されてすぐの調査任務へマァナと向かった時だ。
鮮烈な日差し、真っ青な空、香る潮風……今迄の任務地で感じる事もなかった不思議な開放感……
視線の先には白い衣装を纏ったマァナが無邪気な姿で微笑んでいる。
波打ち際で子供の様にはしゃぐ姿に呆れながら声をかけた。
「そんな珍しくも無いだろう。」
「う〜ん、でも今の私は海って初めてかな。ナベリウスも内陸任務ばかりだったでしょ?」
真っすぐ見つめ返す瞳を受け止め肩をすくめる。
そんな素振りをしてみた所で否定する気は微塵も無い。
一年前、彼女と出会い共に行動をして自分の中に生まれた変化。
いつの間にか受け入れてしまったその存在。
「調査が終われば少し楽しむのも悪く無い、か。」
「でしょう?」
心地よく響く笑い声……そこで彼は現実に引き戻された。

ma1.png



今の自分はマァナの側に居る資格は無い……乾いた笑いだけ浮かべ八代は簡易ベッドから起き上がり、最低限の身なりと武装を整えた上で通路を歩く。
響く足音に感情が含まれているとするなら不快さだけだ。
その音が鳴り止む。
捕虜として収容されたシェスファが閉じ込められている部屋の前には己と同じ顔をした男がいる。
無意識に首筋に掌をやった。
撤退後、この特殊なクローン体との共鳴を防止する為に生体パッチを打ち込まれ、更に行動を管理されている。不快感はそれだけに起因するものではないが……。
「彼女と話をしたい。」
「必要があるのか?」
同じ声が重なり合う。
「ウォーリックへの対策にな。肉親ならば会話の端からでも何か得られる可能性がある。」
「ふむ、確かに俺ならそう思うかも知れんな。」
もう一人の自分に許可を得て、室内へ入る。
八代の目に写るのはマァナと似た髪の色と瞳の色を持つ少女だ。
まがりなりにもアークス。反撃をされぬよう四肢を拘束されている。
テクニックに関しては全く使いこなせないという事はリサーチ済みの為、奇襲攻撃は無いと考えられる。
直接会話をするのは初めてだったか、と思い口を開こうとした矢先だ。
「兄様はどんな事があったって負けないんだから!人質なんて無駄だからね!」
可愛らしい声が強気に放たれる。ここぞとばかりに張り上げる声に固く強張っていた心へある思いが走り、八代は大笑いをしてしまった。
シェスファは頬を膨らませ憤慨する。
「おかしいなら笑えばいいの!絶対、兄様は負けないもん!」
年齢や素振りこそ差異はあれど、こうも重なるものか。
シェスファと重なる別の面影。
あいつも少女の頃はこんな風だったのだろうか……
その考えが過った時に笑みは消えた。
取り戻したいもの……それが再び浮かんだからだ。
胸の中に響くマァナの「今の私」とういうほんの僅かな言葉。
無邪気さの反面に感じるものが八代の心を刺す。
彼女は馬鹿だと言うかも知れない。それでも取り戻したいもの。
八代の感情を断つ様に背後の扉が開く。
「ヤツらが来たようだ。」
「兄様が!?」
「こちらの警戒区に入るまではまだ猶予がある。」
「分かった、迎撃は俺が……ッ!?」
不意に鳩尾へデッドアプローチで打撃を与えられた八代が壁まで吹き飛ばされる。
「邪魔な俺などいらん。ヤツは俺がやる」
クローン八代が輝きを失った無感情な瞳で見下ろした。
背を向け、身動きが取れない八代の両足を正確に射抜く。
「……約束が……違う!」
「八代さんっ……!?」
八代を心配する声をあげたシェスファが拘束する特殊な手錠を引かれ、クローン八代の背中に侵蝕された核の翼を見た。起きている状況と目の当たりにしたものでシェスファは言葉を失う。
「ああ、そうだ。虚空機関の辿り着いた研究成果の一つ……一定以下にフォトンの力を落とす事で植え付ける核……そこからアークスの回復に伴いフォトンと核をダーカーのエネルギーに変質させる……」
シェスファはその言葉が耳に届くかというタイミングでスタンさせられ抵抗も出来ず、身体を無造作に荷物の様にかかえられた。
再び響く銃声が八代を貫く。
腹部から流れるだした血は夥しく、今すぐにでも治療を必要とするものだ。
「どうやらおしゃべりなフォトナーが居たようだな。調査した上で始末する。」
クローン八代がそう言いながら向き直った先に何者かがいる様子だ。
「ああ、君に任せよう。」
扉が閉まり本来なら声など聞こえないはずだ。
しかし薄れ行く意識にせせら笑う声が響く。
「覚えておくと良い、アークス風情が対等な立場にあると思わない事だ。」
それは人を弄ぶ愉悦と、切り捨てる冷徹さを併せ持つ尊大なものであり、八代を身震いさせた。
まさかという思い、そして後悔が八代を責める。
「マァ……ナ……」
続く言葉は誰にも聞こえないが、語ろうとした言葉には彼の心がもつ思い全てが込められていた。

採掘場跡の深奥。
ドーム状の枠から続く作業用クレーンのワイヤーに吊り下げられた拘束状態のシェスファが気を失った様子でぐったりとしている。
そしてクローン八代の姿が見えた。
ウォーリックとブラウリヒトが辿りついた時に見えたのはその二つの影だ。
「本物の八代さんはどうした?」
「ほう、面白い事を言うな。」
「何が面白い。」
割っているブラウリヒトのキャスト独特の響きがドームの反響で強調された。
「本物と言う定義は、そこに唯一のものが存在すれば成立する。現に俺はここに居て存在している。ならば俺が本物だ。」
「……殺したのか!」
「まぁ、助かりはしない……だろうな。そして俺はお前を殺す。八代が依頼された事を執行し俺が俺だと証明する。俺にはやらなければならない事があるからな。」
双機銃を抜き放つ姿は何処までも八代そのもの。
だが胸には違和感が残る。
苦い表情でウォーリックがガンスラッシュのルフネシアで銃撃戦に応じた。
獅子の紋章が浮かび、クローン八代の弾丸が消える紋章を通過する。
極力消耗を抑え、ブラウリヒトにシェスファを救出させる。
この深奥にあるドーム区域が勝負の場所になるならばと立てたプランだった。
ドーム外には障害物もあり、時間稼ぎにはなるという読みは誤りではない。
本来の八代の腕、そして2対2で挑む場合の計算を入れ望んだ戦いだ。

2014-05-24-065254.jpg

ブラウリヒトも同じくガンスラッシュでの援護射撃をし、クローン八代が100%での戦いを出来ぬよう連携する。様子をうかがうに敵はあくまで標的をウォーリックと定めているようだ。
好都合とばかりにその間にもドームへ突入し、作業クレーンに向かいホバーの勢いを緩めない。
クレーン下にブラウリヒトが着いた様子を感じたその時、ウォーリックとクローン八代の表情は同じく口の端をあげたものだった。互いが策を講じ浮かべた笑み……次の瞬間、後者の笑みが続くものとなった。

空間に生まれる巨大な闇……そして嘶く声と共に現れるのはブリュー・リンガーダ。
有翼の巨大ダーカーの出現は一瞬の安堵を危機へと叩き落とすのに十分だった。
嘶きと衝撃でシェスファが気を取り戻すがおぼろげなままで完全な覚醒まで至らない。
「ウォーリック、残念だったな。罠と言うものはかからなければ効果を成さない。今のお前の表情を想像すると楽しいものだ。」
その言葉はウォーリックが懸けに出るきっかけを作るものになった。
万全の身体で無い。それは重々承知している。だが勝機を少しでも作れるならば。
退く勇気と進む勇気、それは背中合わせだ。その選択を誤ってはならない。
「お前は八代さんじゃない……やはり偽物だな。」
障害物としていた瓦礫から身を乗り出し、ウォーリックは自らを的にする。
ここぞとばかりクローン八代がチェインフィニッシュを発動させた。その隙にコンゴウへと武器を持ち替えたウォーリックが紋章を残しながら踏み込む。
引き金の指の動きに集中し、トリガーがひかれる瞬間、アサギリレンダンを繰り出し銃弾をすり抜ける。クローン八代が次にウォーリックの姿を捉える瞬間を狙うが、真横へステップしたウォーリックは再びアサギリレンダンで肉薄した。
次の瞬間、ウォーリックの額にあるゴーグルのきらめくレンズに映った己の驚愕の表情。
そこから先の光景をクローン八代が見る事は無かった。
高速の剣先が生み出したフドウクチナシの衝撃波で意識を飛ばされ、続くサクラエンドの斬激が侵蝕核を切り裂き大地へを落とすと、それはただの塊と化した。
同じくしてクローン八代も大地に倒れることになった。
本物の八代では無い……八代と同じ記憶、身体能力があっても人為的なコントロールをされている事が決定的な差になった。戦いながら感じていた違和感と、言動……本人そのものではない、いわば命令の入力を待つラグのようなものがある……それがウォーリックを懸けに出させるきっかけになったのだ。
だがまだ危機は終わらない。
あの有翼のダーカーを倒し、救わねばならないものがいる。
先んじて戦うブラウリヒトへ加勢する為、速やかに身を翻した。
スポンサーサイト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

補足と追記【4】

脳内緊急第三弾!とちょっと堅苦しい話

comment iconコメント

comment avater

マァナ

今日八代さんと電話で話してたんだけど、私と会うまではほとんどソロで狩りをしていたんだって。出会ってからは一緒に行動するようになって、確かに変化はあったわけで・・・
電話の内容聞いてたのかと思うぐらいタイムリーでびっくりした描写でしたw
八代さんとシェスファがどうなってしまったのか気になるううう

戦闘シーン、相変わらずかっこよかったですw

2014年06月25日 04:56

comment avater

ウォーリック

Re: タイトルなし

> マァナさん
あらら……まさかのリアルタイム連動w
色々と当初から予定が変わってきてるからねぇ、みんなのキャラは大事にしたい!
マァナさんと八代さんが扱い大きくしちゃったからねぇ、その着地点は自分でも楽しみです。

2014年06月25日 05:05

comment avater

赤雪

出勤してとりあえずブログチェック(ぇ……新作きてるー!
執筆おつかれさまです!

お待ちかねの八代さん掘り下げ回!!大切な人のため孤独に戦う……そんな不器用なトコが魅力的!
デッドアプローチ痛そうだなぁ……って思ってたら追い打ち……大丈夫なの!?
なんとなくマァナさんの設定も垣間見えてきた感じ……
ますます先の展開が気になる!!

2014年06月25日 10:28

comment avater

ウォーリック

Re: タイトルなし

> 赤雪さん
やはりこの辺りで八代さんの内面に触れずにはと、書いてみたらマァナさんのコメントにあるようご本人自身マァナさんに出会うまでソロアークスだったと言う偶然が!
満身創痍の八代さんは果たしてどうなるのか、気になる部分は絶えずまだまだ続かさせて頂きます!

2014年06月25日 20:34

コメントの投稿



trackback iconトラックバック

トラックバックURL:

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。